加持祈祷

仏さまの加護を受け、「理」と「事」を整える

　加持とは「加護を持つ」と書くように、仏さまの力をかけてもらうということで、密教においてはさまざまな形式、修法によって行われているものです。
　密教ではこの世の中の物事は「理」と「事」でできていると考えられています。1つの例をあげるなら、茶の葉を水に入れてできた液体が目の前にあるとします。これを誰かがお茶と判断せずに除草剤と判断すると、それは口に運ばれることなく雑草の上にまかれることになるでしょう。正しい力が発揮できたとはいえない状況です。一方、それはお茶だ、飲みたいという思いである「理」と、目の前の液体、つまり「事」が混じり合ってお茶という価値が生まれ、口に運ばれ、お茶を飲むことになります。これは茶というものが持つ力が発揮されている状況といえます。
　このように、事象ごとには「理」という目に見えない力が働いています。「理」というのは思いや理解というものだけでなく、さまざまな縁が絡み合った全ての事を含みます。身体的に悪いところが出てきたというのは事象ごとで、これに付随する理を整えることが、加持や祈祷と考えることができると思います。もちろん「事」と「理」は一体で、理を整えるだけで全てがうまくいくとはいえませんので、仏さまの加護の力を受けながら理を整え、目に見えてくる事象ごとに取り組み、仏さまと修法者と祈願者とが、心一つになれるような加持を行っています。